ポケモンGOを活用した社会インフラの点検作業の効率化について(提言)

はじめに

 日本の社会インフラは、戦後の経済成長を背景に着実に整備されてきたが、高度経済成長期に建設された橋梁の65%が2032年には建設後50年を経過するなど、老朽化や劣化による大きな事故や災害の発生が懸念されている。このような状況下において、既存ストックを今後も有効に活用していくためには、劣化や老朽化の兆候をできるだけ早い段階で発見する、点検作業の頻度と精度の向上が求められている。
 一方で、建設業においては、熊本・東北の復興事業や、東京オリンピックに向けた準備事業などによる建設需要の増加に加え、少子高齢化を背景とし、深刻な技術者不足が問題となっている。社会インフラの維持管理サイクルを円滑に進めていくためには、点検のみならず診断、対策の各段階に効率よく技術力を分配する必要があり、特に点検の中でも比較的簡易な目視程度の情報があればよい項目については、技術者の負担を減らし、かつ頻度については可能な限り増強していくことを求められているのが現状である。
 本論は、このような現状に対する現実的な解決方法のひとつを提案するものである。

具体的な解決策

 ポケモンGOは位置情報を利用したゲームであり、ポケモンの捕獲はカメラの映像を利用したAR(拡張現実)であることが既に知られている。すなわち、個人情報の部分提供に関してプレイヤーの同意が必要であるものの、位置情報と組み合わされた映像を大量に手に入れることができると考えられる。たとえば点検が必要な部位にポケモンを出現させ、その写真を撮るミッションを用意することで、プレイヤーに対して、目的の対象物を必要な角度から撮影するよう促すことができ、技術者は現地に赴く必要なく目的の写真が手に入る。
 GPSの精度等によっては目的の対象物が適切に撮影されていない画像が送られてくる可能性はあるが、大量の画像があれば近年目覚しく発達しつつある人工知能の技術により不要な画像を自動的に排除することは難しくないと考えられる。さらに、人工知能の技術を有効活用すれば、異常・変状を生じた対象物を写真から自動的に判別することも可能になると考えられる。

ボランティアを活用する方法との比較

 技術者の負担を減らし、高い頻度で点検を行う方法のひとつとして、対象物の近所に在住する特定のボランティアに点検を依頼する方法が考えられる。ボランティアを活用する方法は、作業者が明確であるため細かい指示が可能であるなどの利点がある一方、モチベーションや体調、あるいはそれが維持できない場合の後継者探しが不調となった際の継続性に不安がある。特に、モチベーションに関しては適正な対価を支払うのが望ましいが、ひっ迫する国家財源の中で、膨大な対象の点検に当たる点検者への謝礼の支出の困難さは増していくと考えられる。
 これに対し、本論で提案する方法は、数多くのプレイヤーがかわるがわる作業にあたることになり、個人の作業の継続性を問題にしないほか、金銭による対価を支払わずとも、ゲーム内でのメリットを享受させることにより、モチベーションの創出が可能である。たとえば、ある点検対象の写真が長期間にわたって撮影されていない場合に、その点検対象付近にレア度の高いポケモンを出現させるなどの手法により、プレイヤーの行動を的確にコントロール可能であると考える。

モニタリングシステムとの比較

 現状、目的を同じくする取り組みとして、さまざまなモニタリングシステムの開発が検討されているが、たとえば定置式のカメラのような精密機器を、塩害や凍害のおそれのある過酷な環境下に長期間にわたって設置し続けることは故障の多発につながり、装置の耐久性が求められ、時として技術者が現地で写真撮影するよりも大きな経済的、労力的負担になる場合も考えられる。これに対し、本論が提案する方法は、スマホカメラという高性能かつ精密な機器を使用するにもかかわらず、苛酷な環境に置かれる時間は非常に短く、また民間個人の資産と活動力を利用するものであるため財政的な支出も大幅に抑えることが可能である。国内に存する個人所有のスマホカメラの数は膨大であり、これを活用して全国に同じく膨大に散在する社会インフラの点検に当たる方法は、きわめて合理的であると考える。

予測されるデメリット

 点検が必要とされる社会インフラは、その設置環境等によっては撮影作業に大きな危険が伴う場合が予想される。初期作業として点検対象物のまわりの安全性を十分に確認する必要がある上に、プレイヤーが危険な行為に及ばないよう十分な警告を行う必要がある。また、ポケモンGOのゲーム自体の将来的な人気の降下は本案のリスクであると捉えられる。
 また打診点検など特別な技能が必要な点検や、AEのように特殊な機器が必要な点検については適用できない。本案によって軽減された技術者の能力をこういった点検に集中させることが望ましい

終わりに

ポケモンGO潜在的に有する社会的資本への貢献の可能性について述べてきた。本論が提案する方法は民間の個人が所有するスマホのカメラの性能向上を背景に、その利活用を最大限に促すものであり、国庫の財源に限りがある中でPPP/PFIと同じく民間活力の公益的目的への活用として位置づけられるものと考える。この提案が国土強靱化に資することを期待する。