集合住宅が賃貸と分譲で異なるビルディングタイプとして設計されていることについて

こういう記事がホッテントリに上がってきていた。
住宅を賃貸と購入どっちがいいの?と聞かれたら「賃貸最強!」と答えよう - Future Insight

つねづね書いてきているように、同じ物件であれば分譲よりも賃貸の方が、住み手にとってはお得だと思っているので、上のブログにはまあ賛成。その理由については、すでに以下で書いているのでさらっと書くと、住宅を買うということは、そこにあるリスクも一緒に買っちゃってるわけで、素人がそんなリスクちゃんと評価できんの?ってこと。
住宅と一緒に買わされるものについて - concretism


今回は、同じ話を売り手、ディベロッパーとか不動産業者の側から考えてみたい。

売り手側からすると、一棟の集合住宅が抱える、たとえば地震、設備の老朽化、経済状況の変化といった様々なリスクを、いかにうまく買い手、住み手に押しつけてしまえるか、ということになる。

そういう目線で、一棟の集合住宅を販売することを考えると、押しつける相手は少ない方がいい。クリームの代わりにワサビを塗ったケーキをワンホール売ろうと思ったら*1、ワサビを抹茶クリームに見せかけるように細工したり、香りでばれないように密封したり、巧妙なセールストークを考えたりといった手間がかかると思うけど、それを考えたら、できるだけ大きくカットして少ない人に売った方が、騙す相手が少なくて楽だ。あまり大きくても、買い手がかなりの資産家に限られてしまい、かえって販路を狭めてしまうだろうけど、そうならない範囲で、分譲住宅では一住戸は大きい方が望ましいということになる。

いっぽう、賃貸住宅はというと、リスクの多くは大家さんの手元に残ったままだ。これを抱えたまま、初期投資を家賃という形で回収していくわけだけれど、その中での最大のリスクは空室になる。一棟のマンションを、分譲のように大きな住戸に分けてしまうと、一住戸が空室となった時のダメージが、相対的に大きくなってしまう。そう考えると、賃貸住宅の一住戸の大きさは、ニーズのある中では小さい方に集中する。


問題は、同じ集合住宅という用途でありながら、その供用期間の初期において分譲であるか賃貸であるかによって、住戸の大きさ、建築としての形が変わってしまうということ。分譲住宅は大きい方、賃貸住宅は小さい方に集中してしまい、その中間の大きさを持つ住戸が供給されにくいこと。そして、住戸の大きさは、主に売り手のリスク回避戦略によって決まり、買い手のニーズがあまり反映されないというところにある。

現在供給されている建築の供用期間は、集合住宅に限ったことではないが、人間の寿命よりも長いものと考えられる。そう考えると、分譲とか賃貸とかいった分類は、長い住宅の寿命から見ると、最初の住まい手の所有形態にすぎず、これが建築そのもののあり方、設計の仕方を決めてしまうことは、果たして良いことなのだろうか。

理想としては、さまざまな大きさの住戸が、分譲、賃貸*2に偏らない形で、住まい手のニーズに合わせて供給されることである。ある不動産からの利益の最大化ということを考えると、狭い地域でみるとどうしても同じ解答になってしまうだろうことは想像に難くないが、それを乗り越える方策が必要である。

*1:チョコレートの代わりにウンコを塗ったケーキにしようと思ったけど、お食事中の人を慮った。

*2:わたしのお勧めするところは、「スケルトン貸し&インフィル売り」であるけど、話がややこしくなるのでここでは触れない