日本に非限定正社員なんてものが存在する理由がわかった


つまり、退職金でしょ。

アメリカの退職金システム | アメリカで10倍うまく立ち回る方法
日米の違い: 雇用、持ち家、年金 - 101280.net

なんとなくそうなんだろうなー、と思いつつ、「アメリカ、退職金」とかでググって上の記事とか読んでみて、やっぱそうなんだろうと。

僕はかねがね、日本人の働き方の原形は、建設業にあるんじゃないかと言ってきたけれど、日本型雇用というのもまた、建設業の契約方式の典型である、請負にその根っこがあるんじゃないかと思うわけですよ。

あ、かねがねってのは、この辺参照で。
建設業全体で見るとメンバーシップ型とジョブ型の二層構造である件 - concretism
日本人はプロセスに対してお金を払うのが苦手だ - concretism


つまり、日本のサラリーマンの労働契約ってのは、請負契約なわけですよ。あ、完全にってわけじゃないですよ。月給というものがちゃんと出るんだから。正確に言えば、請負契約的な性格が強い。そして、退職金というのは、請負契約の報酬である、と。

請負契約というのは、Wikipediaによると、

当事者の一方(請負人)が相手方に対し仕事の完成を約し、他方(注文者)がこの仕事の完成に対する報酬を支払うことを約することを内容とする契約。

な、わけでありますけど、じゃあ日本のサラリーマンが、「仕事の完成」として何を約しているのかというと、

定年退職するまでの間、

  • 会社を辞めません。
  • 会社を倒産させません

の二つ。

この二つが完成されたら、請負契約の報酬として、退職金が支払われる。もし、これが完成されず、途中で会社を辞めちゃったり、会社が倒産しちゃったりしたら、請負契約は不成立ということで、報酬は、払われないか、大幅に減額になる。サラリーマンは、請負契約が不成立にならないよう、社畜として身を粉にして頑張るわけです。

そう考えると、日本型雇用では、ジョブ型雇用のように明確なジョブが与えられない理由も説明できる。請負契約では、仕事の完成に対して報酬を支払うわけであって、その完成のためにどういう手段をとるかについては、請負者が完全にその決定権を持っているわけですから。。


そして、職務の範囲が限定されない、非限定正社員、なるものが生まれてくるわけです。


それに、いわゆる解雇規制と呼ばれているものの正体も明らかになってくる。もともと、会社は労働者と、請負契約をしているわけなのに、会社の都合で、違約金も支払わずに一方的に契約破棄はないんじゃないの?と。その問いかけが、なぜか規制と受け止めれて、「解雇規制」などと呼ばれているわけです。裁判所が日本の雇用契約の本質を理解しているかどうかは謎ですが、そう考えると、不当な規制でもなんでもなく、ちゃんと契約を守れよと言っているだけの話なわけです。


このように、日本の、請負契約的な性格の強い労働契約の形を見てみると、退職金の位置づけがアメリカと全然違っていることがわかりますよね。アメリカでは、働いていたのが一つの会社だろうがたくさんの会社だろうが、現役の間に納めたお金の額に応じて、退職金が支払われているようなので。

こうして考えてみると、日本の雇用規制と一般に呼ばれているものを解消して、雇用の流動性とやらを生み出すための方策というものが見えてくるのだと思います。すなわち、とっぱらいです。退職金を、なしか、限りなく小さくすることで、その時その時の労働の対価をとっぱらいで受け取れば、お互いに後腐れなく、辞めたり辞めさせたりできるだろう、と。これが、限定正社員というやつでしょう。

しかしながら、いま現在、請負契約を遂行中の我々社畜にとっては、簡単に契約内容を変えられるというのも困ったものです。それは、会社の方から見ても同じことではないかと思います。

ただ、請負契約の遂行期間として、たとえば大卒22歳から定年65歳までの40年強という時間は長すぎるだろうという話は理解できますし、だからこそ、40歳定年制みたいな話が出てきたんじゃないかと考えられますが、そこの議論はマスコミがちゃんと報道しないのでよくわかりません。


つねづね言っていることですが、こういうのは、普遍的にどの契約形態が正解だという話じゃないんだと思うのですよ。たとえば、企業秘密を厳重に保持していくために、従業員の報酬の一部をプールして、裏切りがあった場合には返さない、という契約は、理にかなったものですし、これは日本型雇用の形に極めて近い。

重要なのは、労働者個々の仕事の内容に応じて、またそのライフスタイルに応じて、インセンティブ・ペナルティ含めて、会社労働者がお互いに利益になるような、さまざまな雇用契約が自由に採れることなんだと思います。


このエントリは以下の記事を読んだところから思考がスタートしていることを言い添えておきます。
「限定正社員」構想の議論、欧米では一般的だというのは大ウソ | 冷泉彰彦 | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト