伊東豊雄氏プリツカー賞受賞を報じたNYタイムズ記事がおかしいと俺の中で話題

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伊東豊雄さんが、建築界のノーベル賞ことプリツカー賞を受賞されました。おめでとうございます。
「建築界のノーベル賞」に伊東豊雄氏 NHKニュース

ところで、これを報じたニューヨークタイムズの記事がなんだかおかしなことになっていると、私の中で話題です。
Toyo Ito Wins the Pritzker Architecture Prize - NYTimes.com

Toyo Ito, a Japanese architect who broke from Modernism and designed a library that survived his country’s catastrophic 2011 earthquake, was awarded his profession’s top honor, the Pritzker Architecture Prize, on Sunday.

冒頭からこのようにある通り、記事は伊東氏について、東日本大震災の中でも倒壊しなかった図書館を設計した人物であると紹介しています。この図書館とは、せんだいメディアテークのことであり、伊東氏の代表作であります。

さらに文中では、この記事(リンク)を書いた Ada Louise Huxtable の言葉として、次のように述べています。

It stood firm against the massive seismic forces that were tearing other buildings apart; the basic structure did not fail.

他の建物を壊滅させた強大な地震力にもかかわらず倒壊することはなく、基本構造に損傷はなかった、と。これを読んだ人はおそらく、がれきの広がる荒野に、せんだいメディアテークだけが屹立している様を思い浮かべると思います。ところが。

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これは、2011年4月下旬のせんだいメディアテークの様子を、私が撮影したものです。確かに、メディアテークは倒壊しておりませんが、写真奥、あるいはガラス面に写り込んだ周囲の建物もまた、その姿を保っております。この写真を撮影した者として言い添えるならば、完全に使用不能に陥って立ち入り禁止となっていたせんだいメディアテークとは対照的に、それよりも古くから建っている周囲のビルには明かりが灯り、中で働いている人の姿も多く見ることができました。

立ち入り禁止のメディアテークの前には、職員の方たちが臨時の受付を設け、まだ肌寒い東北の4月の空の下、ささやかながら図書館業務を再開しておられました。上の写真の左下、カラーコーンで囲ってある辺りです。その傍らには、内部の被害状況写真をパネルに仕立て、掲示しておられました。それが冒頭の写真であり、それをアップにすると、以下のような状況が見て取れます。
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繰り返しますが、せんだいメディアテーク東日本大震災によって倒壊しなかったのは事実です。しかし、それはプリツカー賞を受賞していない他の建築家の設計した建築物すべてに言えることであって、伊東豊雄という建築家の業績を表すものとしては、少々そぐわない感じがします。

それどころか、やはり、この建築は、図書館の機能としてで周囲の建築より劣っていたと考えざるを得ない部分もあると思います。
特報:メディアテークの天井崩落、吊りボルトの破断が判明|日経BP社 ケンプラッツ

建築構造の剛性、非構造体の構造性能というのは、東日本大震災を経てその重要性が見直されたところであります。震災前にそれに気付けなかったことを責めるのは適当ではないものの、それを褒め称えるということにはやはり、幾分の違和感をおぼえるのであります。