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J-CASTニュースの肩なんか持ってもしゃあないんやけど

雑感

いやいやいやいや。冨田かおり議員(改革フォーラム)ってのが何者かは知らないし、議会でどんな聴き方をしたのかわからないけれど、この記事(残業年1873時間で783万円、年収1574万 さいたま市職員なぜそんなことが許されるのか (1/2) : J-CASTニュース>>)をソースにこの人やJ-CASTニュースを責めるのはおかしいでしょう。

どうやら記事は「改革フォーラム」とやらに属する冨田かおりというみんなの党系のさいたま市議の問題意識に沿って書かれたものらしいが、「さいたま市職員の多額の時間外労働手当は怪しからん」と言いたいのだろう。
なぜ「みんなの党」系さいたま市議・冨田かおりはさいたま市職員の「多額な時間外労働手当」ではなく「過重な労働」を問題にしないのか - kojitakenの日記

法律に基づいた正当な時間外手当を払ったことがケシカランケシカランとわめき立てるわけなのですね。
「権利過剰論者」にとって問題であること、問題でないこと: hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳)

時間外手当を払ったことがけしからんと言ってるわけではないでしょう。サービス残業させろよ、なんて言ったらそっちの方がニュースになるわけで。ぼくだって、強制的にこの職員が長時間労働させられてたという話なら、腹立たしく思いますよ。たださ、長時間労働といえば、労働安全衛生法第六十六条の八というのがあるよね。

(面接指導等)
第六十六条の八  事業者は、その労働時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導(問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うことをいう。以下同じ。)を行わなければならない。
2  労働者は、前項の規定により事業者が行う面接指導を受けなければならない。ただし、事業者の指定した医師が行う面接指導を受けることを希望しない場合において、他の医師の行う同項の規定による面接指導に相当する面接指導を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。
3  事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、第一項及び前項ただし書の規定による面接指導の結果を記録しておかなければならない。
4  事業者は、第一項又は第二項ただし書の規定による面接指導の結果に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、厚生労働省令で定めるところにより、医師の意見を聴かなければならない。
5  事業者は、前項の規定による医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、当該医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会への報告その他の適切な措置を講じなければならない

長々と引いちゃった。ここでいう、「労働時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件」ってのは「労働者の週40時間を超える労働が1月当たり100時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められるとき」(厚生労働省:改正労働安全衛生法〜平成18年4月1日、施行〜)なので、さいたま市は1873時間の時間外勤務をした職員に、計算上少なくとも年数回は「医師による面接指導」を受けさせなきゃいけなかったし、この職員は「医師による面接指導」を受けなきゃいけなったわけだよね。

さいたま市が、この「医師による面接指導」を受けさせていなかったとしたらそれはそれで問題であって、冨田という議員なりJ-CASTニュースなりがとりあげなきゃいけない話なので、そこを確認してないなら彼らの落ち度だろうとは思う。でも、今回はそれについては何も書いてないので、そこに違法性はなかったと、とりあえず思わなきゃしょうがない。

で、そういう前提の上で、この冨田という議員が持ち出すまで、長時間労働の話が特に問題にはなってなかったということならば、この職員は元気で、医師も長時間労働しても問題ないと判断してるはずなんだよ。

いやわかってるよ。この職員が、本当は死にそうに疲れているのに「元気です。大丈夫です」って嘘をついて、医師が技量不足でそれを見抜けなかったか、見抜いていたのに見て見ぬふりをする、というケースは当然想定されるし、もしそうなら糾弾されるべきだと思う。でも、繰り返すけど、この記事をソースにしては、そこまでは読みとれないよね。

だから、とりあえずは、この職員の長時間労働は、強制的であるとは断定できない、ということになる。言いかえれば、この職員が自発的に、あるいは場合によっては望んで長時間労働をした可能性も否定できないということだ。長時間労働に対する耐性はひとそれぞれだし、金銭に対する価値観もひとそれぞれなのだから。

実際に、この職員が強欲だったとは思わないけど、さいたま市職員は年収1500万円欲しさに仕事を独占した。頑健な体とさいたま市職員という身分から得られる既得権益を享受した、という反応があることは予想できる。もちろんこれらは言い過ぎなんだけど、失業者やワーキングプアという立場に置かれたひとの中には、そういう受け止め方をする人がいてもおかしくはないし、2ちゃんねるはどうせそういう反応だったんだろう?

話を元に戻そう。いっぽうで、さいたま市の方を眺めてみる。彼らは市民から税金をちょうだいして、その税金を使って行政サービスを提供する立場にある。行政サービスが、それを担当する職員の労働時間に比例すると考えれば、時間当たりに職員に払う賃金は少ない方が、同じ税金に対して多くのサービスを市民は得られるということになる。

ところが、労働基準法第三十七条には、時間外、休日及び深夜の割増賃金が定められている。時間外であれば25%増し、さらにそれが月60時間を超えれば50%増し、職員には多くの賃金を払わなくちゃいけない。賃金が割り増しされたからといってサービスが割り増しになるはずもなく、普通は時間外に働いてるんだから疲労してサービスの質は落ちていく。つまり、市民から見れば税金が無駄に投入されているということになるわけだ。

ということで、議員がこれに対して質問を行うのは当然だし、ニュースになるのも妥当だと、ぼくは思う。残業代を法律通りに支払ったことを問題にしてるんじゃない(はずだ)。

一人のくたびれた職員に税金を集中投入するくらいなら、市中には職を求める若者があふれているのだから、もうひとり職員採用して、できるだけ時間内で仕事が終わるようにしたほうが、市も、職員も、市民も幸せだろうよ、とまで言ったのかどうかまではわからないけど、そういう主張ならおかしなところはない。これが民間企業なら、無駄な経費は削減削減ということでさっさと是正策を講じるところだけれど、お役所意識では「臨時職員を雇う時間もなかった」という情けない答弁になるわけだ。

まあ、J-CASTニュースの肩なんか持ってもしゃあないんやけどな。