透け風呂とパスタの家

タイトルを見て、何の話だかわかる人はどれくらいいるんだろう。


透け風呂キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!

パスタキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!


のように使う、といえばわかるだろうけど、2ちゃんねるの話。テレビ朝日、「渡辺篤史の建もの探訪」の放送時間、実況板でよくみられるレスである。

主に建築家が設計した個人住宅を紹介するこの番組。透け風呂というのは、こういうの。脱衣室や、あまつさえ居室から浴室の中が丸見えになるような、ガラス張りの浴室のことをいう。一方、パスタについては、必ず挿入される家族の食事シーンでのパスタ率が異常に高いことによるものである。透け風呂にせよ、パスタにせよ、この番組における「あるある」ネタであり、実況民はこうしたあるあるネタを探し出すのが異常にうまい。称賛に値する。


そもそも、風呂というのはプライベートの極致にある空間だ。プライバシーについての価値観、具体的に言うと、ち○こを誰にまで見せるか、というおよそ他人に決められる筋合いのない問題を、赤の他人である建築家に決められてしまっていて、それを誇らしげに全国放送している、という図式。

一方、パスタ。昼食にパスタが食卓に上る家庭は少なくはないだろうけど、この番組はヨネスケの「突撃!隣の晩ごはん」ではないのであって、主役は住人でもなく料理でもなく、家なのである。「この住宅にふさわしいメニューを」と、住人か、あるいはスタッフが考えた末に、メニューが決められる。少なくとも実況民はそう見ており、結果として高確率でパスタになってしまうのは、この番組で紹介されているのが、ひいてはアトリエ系住宅建築家が設計する家が、「パスタの似合う家」ばかりであることを嗤っている、と見ることができるのではないか。

住宅という、本来誰の価値観にも振り回されるはずのない空間で、他人の価値観に踊らされながら住む人々を、羨望と僻みの入り混じった目ではあるものの、エンタテインメントとして眺めるというのは、あまりよい趣味ではないかもしれないけれど大多数の人間の自然な感情なのかな、とも思う。他人の価値観に踊らされている人間を(笑)っているという意味で、透け風呂(笑)やパスタ(笑)は、スイーツ(笑)と同列だ。「建築家のおかしな価値観を押し付けられて暮らしている人」とまではっきりは認識されていなくても、何らかの見方が共有されていなければ、キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!は成り立たないのではないだろうか。

建築家は、建築を通して住む人の生活を良い方向に変えたいと願っている。しかしながら、建築家が建築を通して他人の生活を、いわんや価値観をも変えられるというような考え方は、建築の世界では当然のことのように言われていることだけれど、世間一般では笑われる対象になる可能性もあるのではなかろうか。もちろん、生活をどのような方向に変えるのか、が最も重要であるものの、感覚的なズレが大きくなれば、アトリエ系(笑)と言われてしまうかもしれない。