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エコな企業を見分けるたった一つの方法

建築

切込隊長の記事を読んで。
なんかエコ活動とかやってる奴がいるけどさ: やまもといちろうBLOG(ブログ)

エコの話題は、CO2という指標が環境負荷の評価基準として妥当なのかどうかという話になりがちですが、ここでの話題は、地球温暖化対策=エコというところはとりあえず飲んだとして、それに対する行動がどうなのよ?という話ですよね。同感です。

建設業などと言う、二酸化炭素排出量No.1(なのか?)な業界に身を置いていると、エコなんてきれい事に過ぎん!という気持ちに当然なるわけですよ。もちろん、そうはいいながら、請け負った仕事をきちんとこなす中で、最大限の努力をするわけですけど。でも、切込隊長の言うとおり「究極のエコってのは活動しないこと」、建設業なんかなくなれば、それが一番エコだという切ない結論に至るわけです。

環境に負荷のかかる事業や活動は海外に依存」すればいい多くの他産業と違い、「でっかくて重い」建設業の製品は、海外で作って持ってくるというわけにはいかないので、国内産業の中で統計を取る限り、ますます大きな排出量を占める「悪者」になっていくことが予想されます。したがって、落城とか消滅とか言われながらも、建設業は今後もポーズだけでも二酸化炭素を削減していく努力を積み重ねていかねばなりません。


さて本題。建設業としても、廃棄物の再利用率を上げたり、建物自体のライフサイクルコストを上げたりと、様々な努力をしているわけですが、建設会社だけではどうしようもない、そしてぜひ皆様に注目していただきたいファクターがあります。

それは、「工期」です。

工期と言うのは・・・、という説明は別に要りませんよね。いつまでに、完成した建物を引き渡すか、という期間のことです。

たとえば、ここに一つの建築工事現場があります。1階分の鉄骨工事として、鉄骨部材を40個取り付ければ、次の工程(たとえばコンクリート打設工事)に移れるとしましょう。このとき、1台のトラッククレーンを使って取り付けられる鉄骨部材の数が30個だったとします。

工期が長い現場であれば、一日目に30個取り付け、次の日に10個取り付ければよいでしょう(別に、20個ずつつけてもかまいませんけど、2日目の午後にはコンクリート打設に移れるかもしれませんね)。一日目の工事を終えたトラッククレーンの運転手は、クレーンを置いて電車で帰り、また次の日に電車で来るのが普通ですので、トラッククレーンの往復の消費燃料は1台分で済みます。

しかし、工期が短い現場だと、鉄骨工事に二日かける余裕がありません。クレーンを二台入れて、一日で作業を終わらせます。同時に二台のクレーンを使うため、当然ながら二台の往復分の燃料を消費するわけです。

このように、工期が短い現場だと、トラッククレーン1往復分、二酸化炭素が多く排出されるわけです。ここでは例として小さい現場の1階分の、クレーンの往復の燃料だけを見ましたが、大きい現場で工期全体を眺めてみると、こうした無駄が積み重なっていきます。もちろん、工期が短い現場では、工期が短い分、仮設事務所の中で使う電気代なんかは少なくなるのですが、クレーンの燃料などとは比較にならないことはおわかりでしょう。

一つの建設工事にはさまざまなファクターが絡んでくるので、工期が長ければ二酸化炭素の排出量が大きく、短ければ少ないと簡単に言い切るわけにはいきませんが、少なくとも建設業側で考える「適正工期」よりも極端に短い工期を求められた場合、現実的な二酸化炭素排出量は、上で見たように劇的に増加するはずです。

もちろん、建物がお店であれば、工期が長くなった分の売上げが、オフィスや賃貸住宅であれば、その分の賃貸料が、発注者の懐に入らなくなります。*1もう、おわかりかと思いますが、「エコな企業を見分けるたった一つの方法」として提案したいのは、本当にエコな企業であれば、建物を発注する際に「適正工期」を採用するはず、という判断基準です。

繰り返しになりますが、建設業がなくなれば環境に一番いいのですから、土建屋のポジショントークと捉えてもらってかまいません。ただ、ここら辺で書いたこと、また、古くなった建物、建造物をそのまま使用することは、非効率であり、非効率なまま使い続けることによる環境負荷の増加は、少なくとも量的に見れば、エアコンのそれとは比べ物にならない(そのエアコンも、建物の中に含まれていますが)といったことも踏まえていただき、建設工事を発注すること自体が悪いという結論には、なんとかしないでいただければ助かりますのでございます。

極端な短工期は、建設業の労働環境を劣悪にします。ここんとこ、残業に関する話題を2つ続けたのも、それを踏まえた上でのことです。

現実において、排出されてしまった二酸化炭素は容易には回収できず、お金に換算できるものではありません。建設業というのは、お金の世界の仕組みと、モノの世界の仕組みの食い違いを肌で感じる産業ですが、ここでも強くそのように感じます。二酸化炭素排出量取引というような仕組みが、ここで話題にしたような非常に大きな額の話になったときに、環境対策が企業のイメージアップ程度に考えられている現在から、連続的に変化していけるとは、今はどうしても思えません。将来のことはわかりませんが、今は、適正工期を採用する企業は、本当のエコ企業と言えるのではないかと思うのです。

*1:実は、工期を短くすると工事費も増大するのですが、売上げや賃貸料などの減少額と比べて少なければ、短工期を選択しますよね。