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派遣現場監督というおしごと

建築

建設業界は今でも、7〜10%の利益がだせる業界です
http://www.shachotalk.jp/talk/20060825/index.html



はてブの人気エントリに、こんな記事が上がっていた。
つっこみどころ満載。そして不快。

特に、この会社の本業であるところの、現場監督の派遣ってやつについて、ちょっと語ってみようか。




 もしかすると、建設業界に身を置いておられる方でも、「現場監督に派遣ってあるの?」と思われた方がいるかもしんないけど、現場における派遣社員は決して珍しいものじゃない。最近では、そこそこの規模の現場であれば、3人から4人に一人は派遣社員ではないだろうか。石を投げれば派遣監督に当たる、というような状況だけど、現場でモノを投げるのは危ないから絶対やめてね。


 でも、施主として、設計・監理会社として、あるいは協力会社として元請けの建設会社と付き合ってても、派遣監督を見抜くことは簡単なことじゃあない。なぜかっていうと、彼らは、正社員と同じ制服を着て、社章の入った名刺を持たされているからだ。


 別に派遣社員であることをひた隠しにしようってんじゃないんだ。でも、そこに後ろめたさが全くないかと言われれば・・・ねぇ。


 例えばお金。単価だとかなんだとかの情報、よその会社に持ってかれちゃまずい。それに、派遣の契約に「現場がどれだけ儲かったか」なんてのは通常含まれてないわけだから、真剣にお金の交渉したり、無駄な仕事をなくそうとしたり、なんてのは、彼ら派遣社員にとっては時間の無駄ってわけだ。まあ、よっぽどの信頼を得てない限り、彼らには触らせられないよな。お金の権限持ってない、なんてことがバレると、下請けに軽んじられちゃう。


 一方で品質。建物には瑕疵担保っていって、簡単に言うと手抜き工事とか不具合工事とかあると、会社として責任とらなきゃいけない。当たり前だけど。まあ、責任取らされるのは現場事務所の所長だな。社員であれば、失敗すれば当然評価が下がる。でも、派遣社員個人なんか、絶対に追いかけていかないから、つまり建物が建ってしまえば、いやその派遣社員が現場を放り出されてしまえばそれで終わり。責任感なんて生まれようはずもない。「あとのことはどうでもいいや、って思ってるヤツが現場見てるんですよ〜。」なんて言うわけにはいかんから、施主や設計・監理にも言えねぇ。


 まあ、現場にとっては百害あって一利無し。


 じゃ、なんで派遣なんか使うかというと、まあ、はっきり言って頭数が足りないからだ。世の中大きい現場が少なくなってるから、大手でも小さい現場に手を出す。いくら小さい現場といっても、現場監督一人で見れたのは昔の話。今は安全書類も多いし、ほらISOとかもあるじゃん、そんなのまともにやってたら現場に出る暇もない。


 「じゃあ、派遣社員ひとりつけるから、何とかやってよ。」となる。

 
 で、「こいつ、使えねぇ。」と怒ることになる。


 そもそも、建設業冬の時代とか言って、採用ガンガン減らして、30歳くらいの「わかってて動ける」年代の監督が全然不足してる。いっぽうで中小のゼネコンはどんどん潰たりリストラ進めたりしたから、監督経験者はいっぱいいる。その需要と供給のギャップをついた、ニッチ産業というわけだな。この夢真ホールディングスという企業は。


 前述の通り、ゼネコンも派遣を使うのは苦渋の策。派遣の中で、こいつは使えるとなると、中途採用しまくりだ。「使える」フリーの現場監督も数に限りがあり、後述するように今後増えることも考えにくく、需要・供給ともに先細ることはまちがいない。ほうっておけば、数年中になくなってしまうだろう。

 どうやら佐藤社長はその辺にはもう気づいてるみたい。インタビューの後半は、無邪気に将来を語る藤沢久美氏と、将来の全く見えていない佐藤社長、という構図に見えちゃうね。

 
 藤沢久美氏は、

ある意味ゼネコンに入るということを希望している学生から見ると、こういう夢真ホールディングスさんというのは、ゼネコンよりも広がりがあって、私は面白いのかななんて思うのですけど

なんて言ってるけど就職活動中の学生がこんな言葉を真に受けないように心から願う。 


 派遣監督はこれまでの実務経験を食いつぶして生きてるんだよ。現場監督は過去の失敗の経験をどれだけ繰り返さないかが、能力そのものだ。


 まともな監督を育てるには、何百万、ひょっとする何千万に相当する失敗を見込まなければならない。これほど、教育に金のかかる業種もないよ。机の上でできない教育が多すぎるのだ。当然、現場を派遣監督の訓練の場とする(つまり、失敗を許容する)のは、予算に合わん。失敗は許されないのだよ。この会社に、現場監督として新入社員で入ったらどうなるか。


 受注している工事の数が常に変化するゼネコン。内部に抱えるものはリスクそのものだから、できるだけ少なくしたい。だから、資材から労働力まで、全て下請けに流す。



 それでも現場監督だけは正社員であったのは、クサい言い方をすれば建物に対する愛なんだと思うよ。


 考えても見てよ。現場監督というのは、1年も2年も、あるいはもっと長い時間、ひとつの建物を造り続けるんだよ?建物に対して、思い入れがないわけがない。そして、思い入れが強ければ強いほど、完成した時の喜びが大きい。最大の報酬だ。これは、現場監督であれば、いや、建設業に携わる人であれば、誰もがそう思ってるんじゃないかな?

 この思い入れがないと、建物の品質は確実に落ちる。気持ちの上で「どうでもいいや」ってなったら、どこまでも落ちていっちゃうんだよ。会社としてもそれでは困る。メンテと瑕疵保証のために出るお金は、バカにならないのだ。


 だから、正社員。だったはず。が、前述の通り社員が足りない。



 
 当然、派遣監督は、この喜びを味わえない場合が多いし、味わえなくても文句は言えない。予算がなくなれば、早急に現場を立ち去らねばならないからだ。


 現場監督なんて、朝早いし夜遅い。夏は暑くて冬寒い上、体力仕事。だけど必要とする知識は限りなく、最近はパソコン・CADも扱えなきゃ話にならない。ひとつミスすれば何百万、何千万になる可能性もあって、のしかかってくる責任やプレッシャーははかりしれない。それでも、現場監督を続けるのは、「最大の報酬」があるから。
 

 だから、こういうインタビューで、建設会社の社長が、ものをつくる姿勢を表現しないってのは、非常に違和感を感じるよね。

 
 現場監督が3Kなんてのも、この記事で初めて見た。3Kって、

  • きつい
  • 汚い
  • 危険

だったよな?


 現場監督が、自分の仕事きついとか、汚いなんて言ったら、職人さんたち誰もついてこないよ。それに、安全は現場監督が一番大事にしなきゃいけないこと。自分で危険だと思うようなことは、絶対に職人さんにやらせちゃいけないってことは、基本中の基本。医者が、「病気が伝染るからやだ」って言ってるようなもの。



 なんか、こういう言葉の隅々にまでつっこんでいきたいけど、数が多すぎる。

 
 どうしても、自らを建設業界の外において、業界を見下げている印象がぬぐえない。


 門外漢であることを明らかにしてるヤツが、建設業界を語ってはいけないと思う。